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ワインに詰めるガスについて

最近、「ワインに窒素ガスを充填したい」というお問い合わせが増えてまいりましたので、
そのことに関して記事を書きたいと思います。

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ワインの劣化の原因は酸素

みなさまご存じの通り、ワインは一回開栓してしまったら、
その日のうちに飲み干してしまわないと、味が変わってしまいます。
これは空気中の酸素がワインの中の成分を酸化してしまうことで起こります。
ワインに含まれるアルコールであるエタノールはアセトアルデヒドに酸化されて
しまいますし、ワインの芳醇な香りの源泉である、
さまざまな有機化合物も酸化され別の物資に代わり本来の風味が損なわれてしまいます。

しかし、なかなか一人ではワインは飲みきれなかったり、
グラスワインを提供しているバーなどでは、
その日のうちに飲みきれるかどうか保証できません。

そこで、味と風味を損ねる原因である酸素を追い出すことで、
味と風味を壊さないように行うのが窒素ガスによる置換です。

一度コルクを抜いたワインの瓶に再び密閉式の栓をした場合、
どこに酸素が存在するでしょうか?
それは当然、ワインの液面の上から栓の下の空間です。

普通に栓を閉めた場合はそこに空気が入っています。
そしてその中の空気の約21%が酸素です。
その酸素がワインの味を損ねてしまうのです。

窒素ガスを封入するのはその酸素を追い出すためです。
ワインのボトルに窒素ガスを数秒間流すことで
瓶の中の酸素を21%から0%にするのです。
これで基本的にはワインを酸化から守ることができます。

空気を吸引する方法(真空引き)は簡便だが不完全

他の方法としては、栓をしたのち、ポンプで中の空気を抜く方法があります。
もちろんこの方法でも酸素濃度を低下させることはできますが、
その場合の酸素濃度は窒素で置換するほどは低下しないと考えられます。
例えばポンプで抜いて空気を半分に減らしたとしても、
酸素の濃度はもとの半分、つまり10%は残っているということですし、
1/3なら7%、1/10でも2%の酸素が残っていることになります。
私はこの空気を抜く方法でどれくらい空気を抜くことができるのか知りませんが、
人間の手で行う場合は力に限度があります。
また、機械の真空ポンプなどを使って真空に近い状態にすることはできますが、
そうすると、今度はその陰圧にワインのビンが耐えられなくなって
割れてしまう可能性もでてきます。
このように栓をして中の空気を吸い出す器具は1000円程度で手軽に手に入り、
すぐに実行できますが、完全な酸化防止策とは言えません。

そのような意味では、窒素ガスによる置換は
高圧ガス容器や圧力調整器などを用意しないといけないという
面倒さや費用の高さはありますが、より確実な酸化防止策と言えます。

窒素ガスがよく使われる理由

ところで、置換するガスは窒素ガスでないければならないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
実は不活性ガスならばどんなガスで置換しても良いのです。

不活性ガス(イナートガス)の例

  • 窒素
  • アルゴン
  • 炭酸ガス(=二酸化炭素)
  • ヘリウム
  • ネオン
  • クリプトン
  • キセノン

*上記の他にも不活性ガス(イナートガス)は存在します。

上記の様に窒素ガスの他にも不活性なガスは存在します。
では何故、主に窒素が使われるのでしょうか?
答えは簡単で、安いからです。

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先ほど空気の約21%は酸素だと書きましたが、
では残りの約79%は何だと思いますか?
残りのほとんどと言っていい空気の78%超が窒素です。
つまり、空気の21%が酸素で78%が窒素なわけで、
空気の21+78=99%が酸素と窒素で説明出来てしまいます。
そして残りの1%の中に上記のヘリウム、ネオン、アルゴン、
クリプトン、キセノン、その他の大気汚染物質等が含まれています。

つまり窒素はありふれた物質であり、製造にかかるコストが低いのです。
よって酸化防止のための不活性ガス充填では窒素ガスがもっとも頻繁に
つかわれています。
たとえばポテトチップスの袋の中とか、お茶の葉っぱの袋の中などにも
窒素ガスが封入されていますが、それらはすべて酸化防止のためです。

アルゴンガスも使われています

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窒素ガス以外に、アルゴンガスがワインの酸化防止の為に使われたりもしています。
特に欧米ではアルゴンガスの方が主流のような印象があります。

窒素ガスに比べてアルゴンガスの方が高価なのですが、
桁が違うというほどではありません。
また、不活性度(他の物質と反応しない性質)は窒素よりも高いです。

しかし、一番の理由はその重さにあります。
窒素ガスは、空気よりほんの僅かに軽いだけで、
空気とほぼ変わらない比重です。
ですので、窒素ガスをビンの中に入れてもフタを閉めないで放置したら
簡単に空気と交ざり、もとの酸素濃度に戻ってしまいます。

しかし、アルゴンガスは空気よりも重いので(比重 1.65)、
窒素よりも空気と入れ替わ速度が遅く、
なおかつ重いので下に溜まりやすく、他のガスを追い出す効果が強いのです。
ですので、窒素の場合、放出される勢いでガスを置換するのに対し、
アルゴンは自らの重みを使って置換しますので、より信頼性が高いのです。

ですので、非常に高価なワインで、
万が一にも酸化させて味を劣化させたくないという場合には
少々高価でも、アルゴンを使う場合が多いようです。

ただし、1点、注意点がありまして、
日本ではアルゴンガスが食品添加物として認められてはいません。
(欧州では食品添加物として認められています)
ですので、食品に添加して安全という国のお墨付きがありません。
国からのお墨付きがなくても、一般的なアルゴンガスであっても
99.9%以上の純度はあり、さらに高純度のものは99.999%以上のものも
あるので人体に有害な物質が混入していることは無いと言って
過言ではないのですが、
食品に対してはあまりアルゴンガスは利用されておりません。

そういう事情もあり、食品添加物用の不活性ガスとしては
窒素ガスがよく使われています。
窒素ガスは、日本でも食品添加物として認可されています。

炭酸ガスも使われているようです

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窒素ガス、アルゴンガスの他に、炭酸ガスもワインの酸化防止のために
使われているようです。

炭酸ガスが使われていることは私はまだ未確認なのですが、
炭酸ガスは以下のような用途で使われるのではないかと
推測しています。

シャンパンやスパークリングワインは発泡するワインですが、
あの泡はご存じの通り、炭酸ガスです。

よって、シャンパンやスパークリングワインの場合、
あえて炭酸ガスでガス置換する方が
時間が経っても泡の勢いが弱くならないのではないかと考えられます。
これは私の推測ですので間違っていたらご指摘ください。

逆に、普通のワインを炭酸ガスでガス置換すると、
微炭酸のワインになってしまったりしないのだろうかという気もします。
もっとも、炭酸ガスを強い圧力でかけないと炭酸飲料にはなりませんが、
炭酸ガスは水に溶けやすい物質ですので、
それがワインに溶けることにより、味が若干でも変わるのではないか
という気がします。

このあたりのことは実際の経験がないので何ともいえないのですが、
もしご存じの方がいらっしゃったらご教示下さい。

炭酸ガスは、窒素ガスと同様に食品添加物として認可されています。

ちなみに、炭酸ガスとは二酸化炭素のことで、
最近では地球温暖化の原因として目の敵にされていますね。

不活性ガスの入手の方法

さて、不活性ガス置換による酸化防止効果について
ご理解いただけたかと思います。
では、そういうガスを使うにはどうしたらいいかをお話します。

滅多に使わない場合

家でワインを開けるのは年に数回だとか、
高圧ガスのボンベを置くのは怖いし邪魔になるという場合は、
カセットコンロにセットするような小さなガスボンベのサイズのものに、
窒素ガスやアルゴンガスが充填されているものが
販売されていますので、そちらをご購入下さい。
現状では当社では扱っておりませんので、他のお店をご利用ください。

年に数回程度の利用ならば、そちらの方が面倒が無くよいと思います。

お店などで頻繁に使う場合

上記のカセットコンロサイズのガスボンベだとすぐになくなってしまいます。
おそらく延べで30秒程度の噴射で空になります。
内容積が小さいのと、充填圧力が低いからです。
一般的な缶タイプのガスボンベには4.8L程度のガスしか入っていません。
(内容積 0.6L、充填圧力 0.8MPaで計算した場合)

一方で高圧ガスの容器に充填されているガスは、
同じ内容積でも20倍以上の圧力で充填されているので
かなり大量に入っているといっていいでしょう。

ご参考までに、当社でレンタル可能な容器で最小のものは
500Lというサイズになります。
(内容積 3.4L、充填圧力 14.7MPa)

参考ページ:ボンベの種類

高圧ガスのボンベ内のガスを使用する場合は
圧力調整器(レギュレータ, 減圧器ともいう)が必要となります。
もし、高圧ガス容器内のガスを直接しようとすると、
おそらくワインのビンが吹っ飛ぶか、ワインの中身がふっとびます。

また、圧力調整器の先につけるホースやエアブロアなども必要になります。

当社では、お客様のご相談に応じて、
高圧ガス+圧力調整器+ホース・エアブロア類のセット販売も
行っております。圧力調整器・ホース・ブロア

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参考ページ

実際に当社の食品添加物用ガスをご使用しているお客様の例

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