慢性呼吸不全の患者さんが主治医の指導のもとに自宅で酸素療法を行うことをいいます。
入院しても酸素を補給すれば病状が安定している患者さんや、呼吸不全で家庭での日常生活
が制限されている方などが、自宅にいながら酸素吸入できるように制度化された在宅療法です。
これは健康保険法でも認められた治療方法です。
この在宅酸素療法によって入院という束縛から解放され、住み慣れた自宅での療養が可能と
なり、散歩や買い物、さらには旅行などを楽しむこともできます。
1.家庭内で日常生活が送れ、社会参加への道も拓けます。
2.肺、心臓など各部障害の改善と防止が図れます。
3.長生きにつながります(イギリス、アメリカで研究報告があります)。
(1)酸素流量と使用時間を知る
酸素流量や使用時間は、患者さんの病状や健康状態、年齢などによっても様々です。
したがって、検査や診断をもとに主治医から酸素流量と使用時間の指示を受けましょう。
(2)酸素供給装置の使い方を理解する
装置の扱い方や、管理の方法、注意事項、緊急時の対応などの説明を受け、
機器の取り扱いに慣れましょう。
酸素供給装置には、次のようなものがあります。
・酸素濃縮装置
家庭用の電源で動く装置で、部屋の中の空気を取り込み、90%以上の濃度の酸素を
無限に供給する装置です。
現在国内において在宅酸素療法患者の9割以上が使用しています。
・液化酸素装置
文字通り低温液化した酸素を気化させ供給する装置です。
酸素濃度としては99.5%以上の純酸素です。液体酸素は液化状態から気化させると
約856倍の容量に相当する酸素ガスになります。
原料となる酸素が切れるという心配がありますが、きちっとした配送管理がなされて
いれば問題はないと思われます。
・携帯用高圧酸素ボンベ
軽量化のため、アルミニュームとアルミニュームに合成樹脂を巻いたFRPの容器に
純酸素ガスを充填したものです。
容積は1リットル前後(気体容量150リットル前後)のものや、2リットル前後
(気体容量300リットル前後)の容器があります。
患者さんにとって毎月最低1回の通院時や日常生活における外出散歩時等の使用や、
また酸素濃縮装置を使用している場合の停電・故障時、緊急時に一時的に使用します。
在宅酸素療法によって、快適な日常生活を過ごすためには、主治医の生活指導にもとづいて、
まず患者さん自身が病気を克服し、あるいは受けとめて新しい人生を築くほどの前向きな生活
姿勢をもつことが必要です。
また、家族や介護される方々の協力や励ましも、生活に充実感や張りを与えるでしょう。
(1)食事
暴飲暴食は避け、バランスのとれた食事をしましょう。
食べ過ぎや、食物の種類によっては呼吸が苦しくなる場合があります。
一度に食べられない場合は数回に分けて食べるなどの工夫や、ガスの発生しやすい
食べ物は避けるようにしましょう。
また、塩分のとり過ぎや、栄養状態にも十分注意しましょう。
(2)排泄
排便時の「りきみ」は息苦しさを強くしますので、できればエネルギーの消費が少なくてすむ
洋式トイレを使用しましょう。また、便秘にならないよう注意しましょう。
(3)外出と運動
体調を見ながら適度な運動を心がけましょう。
動くと息苦しいからといって家に閉じこもってばかりいれは運動不足となり、療養上も好ましく
ありません。散歩や買い物、軽い家庭内労働など、適度な運動をすることで足腰が強化され、
呼吸機能の改善にもつながります。
(4)タバコ
タバコは肺機能を悪化させる原因になります。タバコは絶対に吸わないで下さい。また、酸素を吸入しているときの喫煙は燃焼事故の原因にもなりますので、周りの方にも必ず禁煙してもらいましょう。
(5)入浴
できるだけ酸素を吸入しながら入浴しましょう。その際、体力を消耗する熱い湯への入浴や、息苦しいとき、熱のあるときの入浴は避けてください。また、風呂上がりの湯冷めは風邪を
ひく原因にもなりかねませんので注意しましょう。
月に1度は主治医に診てもらいましょう。在宅酸素療法を実施している場合は健康保険の適用を受けていますので、1カ月に1回は受診が必要です。また、風邪をひいた場合は早めに診察を受けましょう。
酸素吸入していても、次のような症状が出たとき、また普段と違う症状がでたときは、
すぐに病院に連絡し、主治医の指示を受けましょう。
・息苦しく動悸がする。
・手足の指先が白くなったり、顔が黒ずんでくる。
・頭痛やめまい、眠気などが続く。
・咳や痰が普段より多い。
・尿の回数が少なくなり、顔や手足にむくみが生じる。
・発熱が続いている。
・冷や汗や脂汗がでる。
自宅で呼吸機能を向上させるリハビリテーションのひとつとして、腹式口すぼめ呼吸法が
効果的です。これは、呼吸に伴う腹筋の動きと動作を一致させることにより、疲れにくくする
リハビリテーションです。呼吸リハビリテーションは、個人によって違いがありますので、
主治医の指導をしっかり受けましょう。
資料提供:株式会社 小池メディカル